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韓国の農業研究は日本人によって始められた

◎≪ WEB 熱線 ≫― アジアの街角から ―
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☆ 世界の農を拓いた日本人(4) ―――――――――――― 2008/07/21

= 福岡県八女市HP参照 =

韓国農村振興庁=日本でいう農水省の農業試験場)で、いまだに語り継がれて
いる一人の日本人がいる。水原市にある農業科学館には、その日本人の功績と
日本統治時代の研究について詳細に展示されるとともにこう締められている。

「韓国の農業研究は日本人によって始められた」

朝鮮の田舎道を行く、ずんぐりした一人の男がいた、1919年(大正8年)東
京帝国大学農学部を卒業した高橋 昇である。

韓国京畿道水原にある勧業模範場(試験場)に技手として赴任した彼は、途中、
米国・ドイツ留学をするも、以後約26年という長きにわたって韓国農業の研
究にその生涯の大半をつぎ込むことになる。

併合間もない頃の朝鮮農業は、前近代的ともいえる、天候にまかせた農業その
ものであり、水利も全く不完全、さらには、植林から始めなければ水の確保も
ままならないという非常に悲惨な状況下にあった。

朝鮮総督府は、水利事業に莫大な資金をつぎ込む一方で、日本式農業を朝鮮農
民に教育することに力を入れていた。

しかし高橋は、この方針に異を唱えていたのである。 彼は、朝鮮農民が昔か
ら行ってきた農法に基づいて指導しなければならない、としたのである。

総督府で働くエリートたちは、実態調査などを「泥臭い非科学的なもの」とし
て無視した。しかし高橋は、

「朝鮮の農民たちは数百年にわたって固有の風土の中で工夫に工夫を重ね、最
善と思われる農法を築いてきたのです。まず朝鮮人農家に飛び込んで、彼らか
ら農法を謙虚に教えてもらうことが仕事の第一歩です」と説いて、自分自身飛
び回ったのである。

日本より格段に雨の少ない朝鮮では、気候の異なる日本の農法をそのままもっ
てきても上手くいかないと判っていたのであろう。

日本式農業の普及の為に「農事試験場」を設立したのであるから、高橋の意見
は相当異端であり、且つ総督府の指導に反するものであった。

しかし高橋は、忙しい研究の中、暇をみつけては朝鮮各地を周り、直に朝鮮農
家を一戸一戸訪ねて、彼らの農法、日常の食事内容、生活習慣、あげくには堆
肥となる排泄物まで、事細かに調査したのである。

その足跡は、北は現北朝鮮と中国の国境「咸鏡北道」から南は「済州島」まで
朝鮮全土に渡るものだった。このような調査を行ったのは、朝鮮開闢以来日本
人の高橋が初めてであった。

もちろん高橋は近代的農法の普及に手を抜いたわけでもなく、彼の研究姿勢は
「何か実験なり企画があったりすると昼夜関係なく部下に召集がかかり、徹夜
で議論することも珍しくなかった」と言われている。

そこには、日本人・朝鮮人の隔たりはなく「寝食を忘れるぐらいに打ち込める
仕事の素晴らしさ」を教えられた若者たちがいたのである。

高橋の執念ともいうべき朝鮮農業の調査資料は、原稿用紙にして1万3千枚以
上、写真1500枚、地図260枚以上と厖大な量に及んだ。

残念ながら、それをまとめる間もなく終戦を向かえることになるのだが、韓国
の懇請により、彼もまたこの地に留まり朝鮮人後進の指導にあたった後、彼の
集めた資料とともに昭和21年帰国することになる。

しかし、帰国からまもなく高橋は急逝してしまう、55歳であった。

ーーーまさにその生涯を朝鮮農業に捧げたのである。

それから50年、「寝食を忘れるぐらい打ち込める仕事の素晴らしさ」を教え
られた後輩と高橋の息子によって、この資料は「朝鮮半島の農法と農民」とい
う本として世に出た。

韓国の専門家が驚愕したというその内容、何故ここまでして調べたという畏敬
の念とともに、「今では全く得がたい資料であり、今後韓国および朝鮮農業の
真の近代化の基礎を明らかにするものである」と同書の永久性を称えられてい
る。

同書は、当時の韓国大統領金大中氏と、北朝鮮の金正日にも送られたのだが、
後に両国から丁寧な礼状が届けられたという。高橋の努力はイデオロギーや国
境を越えて認められたといっていいだろう。

高橋と苦楽を共にした朝鮮人技術者は、その後韓国の農政官僚の中枢を占め、
韓国近代農業の基礎を築いていくことになる。 


ーーーここにも、朝鮮を愛した日本人がいたことを忘れてはならない。


                           = おわり =

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