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ダチョウの卵が世界救う? ウイルス不活性化抗体マスク量産へ

ダチョウの卵が世界救う? ウイルス不活性化抗体マスク量産へ
2008年12月16日


 神戸市西部の丘陵を一群のダチョウが走り回る。「人になつかないが好奇心は旺
盛」。群れを指さしながら塚本さんは説明する。

 塚本さんは六月にベンチャー企業「オーストリッチファーマ」を設立。四つの牧場
で計約五百羽を飼う。無毒化した病原体をダチョウに打つと、体内に抗体が作られ、
卵の黄身に混じって集まり産み落とされる。

 ダチョウ卵の重さはニワトリ卵のほぼ三十倍。抗体が大量に取れないかと考えた塚
本さんは、科学技術振興機構(JST)などの支援を受け卵黄から抗体を抽出する方
法を三年かけて開発した。

 その結果、卵一個から四グラムの高純度の抗体が取れた。普通はウサギやニワトリ
から取るが量産は難しい。ダチョウ一羽から半年間でウサギ八百匹分の抗体が取れる
という。

 ダチョウは卵を約四十年間も産む。同じダチョウから抗体が長期間取れるため製品
の質が安定する。さらにダチョウの抗体は「高温に強く加工に適する」「少量でウイ
ルスを不活性化できる」という都合のいい性質を持つことも分かってきた。

 同社はメーカーと協力し、通常のインフルエンザと鳥インフルエンザのダチョウ抗
体を染み込ませた使い捨てマスクを開発し販売している。ウイルスがマスクを通ると
抗体がついて感染する能力を奪う。一秒間付着すると99・4%が不活性化するとい
う。

 効果を見るため、鳥インフルエンザに感染したヒヨコと健康なヒヨコをフィルター
で隔てて飼育。抗体なしのフィルターでは健康なヒヨコも半分が感染して死んだが、
抗体を染み込ませたフィルターでは健康なヒヨコは一羽も死ななかった。

 塚本さんは薬品の価格表を見せる。「ニワトリから取った抗体は一グラム約四億
円。ダチョウなら十万円でできる。高価な抗体を使い捨てにするなんて考えられな
かった。ダチョウならできる」

 低コストの秘密は餌にも。主な餌は生産調整で捨てるモヤシ。配合飼料より卵をよ
く産むという。「産廃として引き取るので、買うどころかお金がもらえる」のがミソ
だ。

 京都、兵庫など四カ所の「抗体工場」で最大一日にマスク三百万枚分以上の抗体が
抽出されるが、マスク生産が追い付かない。新型インフルエンザ対策に大企業が五十
万枚、百万枚と買うからだ。「なかなか個人向けの需要に追いつかない」のが悩み
だ。

 体に打つ鳥インフルエンザ抗体も海外企業と共同で開発中。「日本は規制で時間が
かかる。まず東南アジア向けになる」という。鳥インフルエンザが人の新型インフル
エンザになる際には一部が変化する。塚本さんは「抗体はウイルスのいろいろな場所
につく。一部が変わっても効果はある」と話す。

 新型の出現後でもダチョウが三千羽いれば半年で日本人口分の抗体が作れるとい
う。

 ほかにトイレの水にノロウイルスの抗体を入れて感染を防いだり、食中毒菌の抗体
を菓子に入れたりすることも考えられるという。

 いまダチョウが注目を集めている。卵からウイルスの感染力を奪う抗体が大量に取
れるからだ。最悪で二百万人の死者を出すともいわれる新型インフルエンザ。その自
衛策として“ダチョウ抗体”を染み込ませたマスクが引っ張りだこという。ダチョウ
の卵から抗体を大量に作る方法を開発した京都府立大学の塚本康浩教授(獣医病理
学)を取材した。 (永井理)

●記者のつぶやき
 塚本さんは大学を出た後に獣医師の仕事でダチョウに出会った。「昔から鳥が好き
で、この大きな鳥を飼ってみたいと思ったんです。飼うために抗体を取るという理由
を作り上げた。そしたらすごくうまくいった」と笑う。好きなことに打ち込んで大成
功とはすばらしい。


http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200807/507175
.html
ダチョウの卵で鳥インフルエンザ抗体を大量生産
マスク用の抗体担持フィルターを製造販売へ


 科学技術振興機構(JST)は7月2日、大学発ベンチャー創出推進研究開発の成果と
して、ベンチャー企業であるオーストリッチファーマ株式会社が設立されたと発表し
た。ダチョウの卵で鳥インフルエンザ抗体を大量生産する方法を確立した京都府立大
学教授の塚本康浩氏が出資したもので、医療機関用マスクなどに適応した抗体担持
フィルターの製造販売を推進し、起業3年後までに年間売上額3億円を目指す。JST支
援で設立されたベンチャー企業は、これで71社となった。

 塚本氏らは、3種のインフルエンザウイルスワクチン株(A/H1N1、A/H3N2、B/マ
レーシア)のHA抗原混合液や高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1由来のH5リコン
ビナント蛋白を用い、産卵ダチョウに免疫して卵黄からそれぞれの抗体(卵黄抗体、
IgY)を大量精製する方法を確立した(図 1、関連情報)。 

 今回設立したオーストリッチファーマは当面、この大量生産法を駆使し、新型イン
フルエンザのパンデミックに備えた製品の開発に取り組む。すでに関連会社の
CROSSEED社を通じてマスクを製品化。秋口からは、大手代理店を通して医療機関や自
治体、大手企業へ新型インフルエンザのパンデミックに備えた備蓄品として大量販売
する予定。また、大手メーカーを通じて薬局薬店での一般向け販売にも取り掛かる。

 このほか、ノロウイルスや結核菌など、他の病原体などの感染予防用素材やダチョ
ウ抗体を用いた腫瘍検査キットなどの商品開発も展開する予定。

 塚本氏らが開発したダチョウの卵黄による精製法を使うと、1羽のダチョウから年
間400gの抗体が精製可能となる。卵1個当たり2〜4g採取可能で、半年間で計算する
と、ウサギの400〜800倍の量が採れることになる。生産コストも低く、ニワトリを
使って精製した場合に比べ30分の1のコストで済むという。また、1羽から大量に採取
できるためロット間の差が少ないというメリットもある。

 パンデミックの特徴の一つは、短期間に想像以上の大量の患者が発生することにあ
る。このため対策面でも、「短期間に大量」がキーワードとなる。ダチョウの卵で鳥
インフルエンザ抗体を大量生産する技術は、「短期間に大量」を現実化するもので今
後の展開が注目される。

(三和護=日経メディカル別冊)

http://www.jst.go.jp/pr/info/info534/index.html
ダチョウ抗体を用いた鳥インフルエンザ防御用素材の開発でベンチャーを設立

 JST(理事長 北澤 宏一)は産学連携事業の一環として、大学などの研究成果
をもとにした起業のための研究開発を推進しています。
 平成18年度に開始した研究開発課題「新規有用抗体の大量作製法の開発」(開発
代表者:塚本 康浩 京都府立大学教授)では、ダチョウ卵黄を用いてさまざまな抗
体を低コストでかつ大量に作製できる技術の開発に成功しました。この成果をもとに
平成20年6月27日、塚本 康浩が出資して「オーストリッチファーマ株式会社」
を設立しました。
 従来のマウスやウサギなどの哺乳類を用いて抗原特異的抗体を創製する方法には、
生産コストや反応性(抗原に対する感度や検出性)などに関わる課題がありました。
それを解決するために本研究開発では、鳥類でありながら哺乳類間ともホモロジー
(相同性)の高い細胞膜たんぱく質に対する抗体を作るダチョウ卵黄を利用し、イン
フルエンザウイルスやノロウイルスに対して、従来の抗体と比較して質的量的に優位
性がある抗体の大量生産に成功しました。本技術を用いて、高病原性鳥インフルエン
ザ注1)ウイルスH5N1の感染を不活性化する高精度な抗体を大量作製、H5N1
ウイルスの空気飛沫感染を防御できるダチョウ抗体マスクの商品化を可能にしまし
た。
 今回設立した「オーストリッチファーマ株式会社」は当面、高病原性鳥インフルエ
ンザH5N1をはじめとする新型インフルエンザのパンデミック注2)に備えた、医
療機関用マスクなどに適応した抗体担持フィルターの製造販売を推進します。起業2
〜3年後までに年間売上額3億円を目指します。
 今回の「オーストリッチファーマ株式会社」設立により、プレベンチャー企業およ
び大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は、71社となりま
した。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。

独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進

研究開発課題 : 「新規有用抗体の大量作製法の開発」
開発代表者 : 塚本 康浩 (京都府立大学 教授/前大阪府立大学※)
起業家 : 片江 宏巳
研究開発期間 : 平成18〜20年
 独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進では、大学・公的研究機関などの
研究成果をもとにした起業および事業展開に必要な研究開発を推進することにより、
イノベーションの原動力となるような強い成長力を有する大学発ベンチャーが創出さ
れ、これを通じて大学などの研究成果の社会・経済への還元を推進することを目的と
しています。

※平成20年3月まで、大阪府立大学に所属。

<開発の背景>

 創薬や診断をはじめ幅広い分野への展開が期待されるポストゲノム研究において、
抗体の活用は極めて重要なテーマです。抗体を使った検査用試薬だけでも、日本の売
上高は約1200億円であり、特に感染症や悪性腫瘍の検査・診断薬の需要が高まっ
てきています。しかし、マウスやウサギなどの哺乳類を用いて抗原特異的抗体を創製
する従来法には、生産性・生産コストや特異性などに関わる課題が存在しています。
 開発代表者の塚本 康浩は超大型鳥類ダチョウを利用することにより、従来法では
できなかった有用抗体の大量作製技術を世界に先駆けて開発しました。
<研究開発の内容>

 ダチョウは鳥類であり、卵により子孫を増やしています。卵黄には血液からの抗体
が移行し、ヒナを病原体から守る免疫システムが構築されています。ダチョウ卵は
1.5〜2kg(鶏卵の25〜30倍)であり、新規に開発した方法で1個の卵黄から
約4gの高純度な卵黄抗体(IgY)が精製可能となりました。これにより、1羽のダ
チョウから半年で400gの高純度抗体の創製を可能となりました。これはウサギ8
00匹量に相当するものであり、製品間の品質のバラツキが極めて少ない診断・検査
薬や病原体除去用商品(抗体の工業的利用)が開発可能となります。1羽のダチョウ
により1億人分の診断の検査薬を作ることができます。さらに、ダチョウの寿命は6
0年以上、産卵期間も40年以上であることから、継続的に同質の抗体を供給するこ
とができます。また、マウスやウサギを使った従来法では作製が困難であった哺乳類
間で類似性の高いたんぱく質に対する抗体が、ダチョウを用いることにより作製可能
となりました。さらに、ダチョウ抗体はヒトの補体を活性化しないため良質の血液診
断キットへの応用化が期待されます。これまでに、哺乳類間ともホモロジーの高いた
んぱく質(細胞膜たんぱく質、腫瘍マーカーなど)や各種病原体(インフルエンザウ
イルス、サルモネラ菌、ポックスウイルス、ノロウイルスなど)に対する高感度抗体
の大量作製に成功しています。使用する抗原によっては、鶏卵抗体と比較しても、量
的・質的に優れていることが見出しました。
 このダチョウ抗体作製技術を用いて、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1
を中和注3)するダチョウ抗体の大量作製技術を展開し、低コストで高品質のH5N
1感染防御用フィルターを開発しました。H5N1ウイルスおよびヒトのインフルエ
ンザウイルスH1N1、H3N2、Bの感染を不活性化しうるダチョウ抗体を表面に
担持させたマスク用フィルターを作製したところ、マスクフィルターとの接触により
上記のウイルスが効率よく中和されることが検証されました。さらにニワトリを用い
た感染実験により、H5N1ウイルスの空気飛沫感染がこのフィルターにより防御さ
れることが実証されました。このダチョウ抗体担持素材は、今後、高病原性鳥インフ
ルエンザウイルスのパンデミックに備えた防御用マスクなどに広く実用化されると期
待されます。
<今後の事業展開>

 当面、高病原性鳥インフルエンザH5N1をはじめとする新型インフルエンザのパ
ンデミックに備えた、医療機関用マスクなどに適応した抗体担持フィルターの製造販
売を推進します。ダチョウ抗体はCROSSEED株式会社によりマスクへと製品化
され、平成20年秋に大手代理店を通して医療系機関や自治体、大手企業へ新型イン
フルエンザのパンデミックに備えた備蓄品として大量販売される予定です。また、大
手メーカーを通して薬局薬店において一般人向けに販売されます。さらに、ダチョウ
抗体を用いた新規インフルエンザのリスク回避用途の開発に着手します。

 今後、ノロウイルスや結核菌など、ほかの病原体などの感染予防用素材やダチョウ
抗体を用いた腫瘍検査キットなどの商品開発も展開する予定です。
<用語説明>

注1)高病原性鳥インフルエンザ
 家禽(ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥)に対して強毒なタイプの(A型のH5
N1など)の鳥インフルエンザウイルスです。ニワトリが高病原性鳥インフルエンザ
ウイルスに感染すると、高い確率で死亡します。高病原性鳥インフルエンザウイルス
の変異により、ヒトからヒトへの感染がしやすくなった、いわゆる「新型インフルエ
ンザ」の出現の可能性が高くなっており、世界的な流行を引き起こすことが懸念され
ています。

注2)パンデミック
 ある感染症や伝染病が世界的に流行することを表す用語で、感染爆発や汎発流行の
ことを意味しています。感染症の規模が大きくなり世界各地で散発的に起こるように
なった状態をいいます。
 歴史的なパンデミックとしては、14世紀にヨーロッパで流行した黒死病(ペス
ト)、19世紀から20世紀にかけて地域を変えながら7回の大流行を起こしたコレ
ラ、1918年から1919年にかけて全世界で2500万人(4000〜5000
万人という説もあり)が死亡したスペインかぜ(インフルエンザ)などがあります。

注3)中和
 ウイルスが種々の動物や培養細胞、発育鶏卵において増殖するときはさまざまな変
化(動物の発病、死亡や培養細胞の細胞変性効果など)を与えます。これらのウイル
スによる変化はウイルスをあらかじめそのウイルスの抗体と反応させるとその出現が
阻止されます。この抗体によるウイルスの感染・増殖能の喪失を中和と呼びます。
<製品例・実施例>

<製品例・実施例>
参考:企業概要・事業形態・参考情報
<本件お問い合わせ先>
<内容に関すること>

塚本 康浩(ツカモト ヤスヒロ)
「オーストリッチファーマ株式会社」
〒619-0237 京都府精華町光台1−7けいはんなプラザ・ラボ棟410
Tel:075-703-5146 Fax:075-703-5146 E-mail:

http://www.jst.go.jp/pr/info/info534/sanko.html
<企業概要>
社名 オーストリッチファーマ株式会社
設立日 平成20年6月27日
所在地 〒619-0237 京都府精華町光台1−7けいはんなプラザ・ラボ棟410
資本金 500万円
役員 代表取締役 塚本 康浩 ほか
事業内容 抗体の受託作製、病原体除去素材の製造販売

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